交通事故に遭ってしまった被害者(加害者)の方が避けて通れないが示談です。ここではその示談について基礎知識から注意すべきポイントまでしっかりと解説いたします。
交通事故示談の基礎知識
まずは交通事故における示談について基礎知識を解説いたします。
交通事故の示談とは?
示談とは、民事上の問題が発生した当事者の間で、裁判を利用せずに、話し合いによって解決することをいいます。
交通事故が起きた場合には、加害者は被害者に対して、被害者に発生した損害を賠償しなければなりません。裁判を利用せずに解決するのであれば、通常、加害者、被害者本人や弁護士が示談交渉をすることになります。しかし、交通事故では、後で説明するように、任意保険会社の担当者が当事者の代わりに交渉することが多くあり、この点が一般的な事件の示談交渉との大きな違いになります。
※任意保険:加入が義務付けられている自賠責保険と異なり、自賠責保険の対象にならない車の修理費用等の損害をカバーするために、任意で加入している保険。
交通事故の示談交渉は誰と誰がするのか?
交通事故の場合、加害者及び被害者それぞれの任意保険会社の担当者同士が交渉に当たることが多くあります。
ただし、被害者側の過失が0の場合は、加入している任意保険会社が交渉を行うことができません。そのよう場合には、被害者自身が交渉するか、被害者が依頼した弁護士に交渉を任せることになります。
示談交渉はいつ始めるのか?
示談交渉の開始の時期は、通常、請求する損害額が定まってからになります。そのため、請求額がはっきりするタイミングが異なる、死亡事故、後遺障害が残存した傷害事故、後遺障害が残存しない傷害事故、物損事故のそれぞれで異なります。
示談交渉開始時期の目安
・死亡事故:事故後数か月後
・後遺障害が残存する傷害事故:後遺障害等級が確定した後
・後遺障害が残存しない傷害事故:ケガが治癒するか、症状固定の後
※症状固定・・・これ以上治療しても症状が良くならない状態になること
・物損事故:修理見積もりが完成した後
交通事故示談の注意すべき4つのポイント
それでは実際の事故の示談の際に注意すべきポイントについて解説していきます。
1 保険会社から提示された示談金額を鵜呑みにするのは危険
保険会社から提示された示談金額をそのまま鵜呑みにしてはいけません。示談は交渉事であるため、保険会社が提示する示談金額は、裁判基準や弁護士介入後の基準に比べ相当程度低い金額になることが多いと言えます。
弁護士が介入する前の保険会社の提示額が適正な金額であるということではないので、これを鵜呑みにすれば、低額での示談を成立させてしまうことになりかねません。
2 示談金額の内訳をしっかりチェック
示談交渉は、通常、加害者側の保険会社から、賠償の対象となる損害項目の内訳が載った書面が送られてきて始まります。送られてくるタイミングは、たとえば、交通事故でケガを負って通院した場合は、治療終了後または後遺障害等級の認定後になります。
示談金の内訳を説明すると、交通事故における損害は大きく分けて①「人身損害」と②「物件損害」の2種類に分かれます。
①「人身損害」は、さらに、財産的損害と精神的損害に分けられます。財産的損害は、治療費や休業損害、逸失利益などをいい、精神的損害は慰謝料のことをいいます。
一方、②「物件損害」の場合は、修理費などの財産的損害しか賠償されず、精神的損害の賠償がされないのが原則です。なぜなら、物損事故の場合は、原則として財産的損害の賠償がなされることで、精神的な苦痛も慰謝されると考えられているからです。
以上のように、一口に示談金といっても、様々な損害項目が含まれているのであり、決して示談金=慰謝料ではありません。そのため、適切な示談額か否かを判断するためには、事故で発生した損害が賠償の対象とされているか、一つ一つ確認することが必要不可欠なのです。
3 示談交渉は口約束ではダメ!しっかりと示談書を作成すること 示談金額の内訳をしっかりチェック
示談が成立する時点は、交通事故の被害者と加害者が損害賠償について合意するために話し合いを進め、お互いの意見が合致したときです。これは、書面で合意をしていなくとも、たとえば、電話で交渉をしていた場合でも成立します。
ただ、お互いの意見が合致したとはいえ、口約束のみでは、加害者が約束を守らない可能性が高くなります。また、加害者が示談で決めた内容に従わず、紛争になった場合にも、合意した内容を証明することが難しくなります。そこで、通常、示談を成立させる際には、「示談書」を作成して証拠を残すことになります。
4 交通事故の損害賠償請求には期限があります
交通事故の示談をする場合、交通事故から時間が経ちすぎてしまうと、加害者に損害賠償を請求できなくなる恐れがあります。これは、交通事故における損害賠償請求権が消滅する時効という期限があるためです。時効の期限は、請求先や損害賠償の内容によって次のように異なります。
(1)加害者に対する損害賠償請求権の時効
・加害者に対する損害賠償請求権の時効は、①「物件損害」と②「人身損害」とで違いがあります。
①「物件損害」は、通常、交通事故日から時効の日数がカウントされ、3年で時効になります(民法724条)。
②「人身損害」については治癒又は症状固定又は死亡時から5年(民法724条の2)で時効になります。
・注意が必要な点として、①「物件損害」、②「人身損害」、両方に共通して、たとえば事故後加害者が逃げてしまったときなど、損害及び加害者がわからず、損害賠償請求ができない状態であっても、事故日から20年を過ぎると、時効により損害賠償請求権は消滅してしまいます。
※症状固定・・・これ以上治療しても症状が良くならない状態になること
(2)加害者の自賠責保険会社に対する被害者請求の時効
交通事故で怪我をした(「人身損害」が発生した場合)にもかかわらず、万が一、加害者が任意保険に加入していなかった場合には、加害者の加入している自賠責保険会社に治療費や慰謝料等を請求することがあります。これを、自賠責保険会社に対する「被害者請求」と言います。
「被害者請求」にも時効があり、時効の計算が始まる時点が、事故によって発生した損害の程度によって異なります。
「後遺障害が残らない怪我の場合」は事故の翌日から3年。
「後遺障害が認定される場合」は症状固定日の翌日から3年。
「事故による怪我で亡くなった場合」は死亡日の翌日から3年。
交通事故の示談交渉の流れや手順
交通事故が発生してから示談が成立するまでの流れは通常の場合、次のように進んでいきます。
1.交通事故の発生
2.事故状況や相手(加害者)の身元の確認
3.警察への通報、警察による実況見分
4.加害者、被害者双方の保険会社への通知
5.ケガの治療
6.治療完了または後遺障害等級の認定により賠償損害額確定
7.示談交渉
8.(示談成立した場合)示談書を作成して、交渉を終了させる。
(示談が不成立の場合)裁判等で損害賠償請求を行う。
示談交渉の流れ
実際の示談交渉の流れをみてみましょう。
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①事故発生:交通事故が発生したら、まずは警察に連絡します。
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②治療:事故によりケガをした場合にはできるだけ早めに病院へ行き(事故日から日を空けないのが望ましい)、適切な治療を受けましょう。
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③完治・症状固定:ケガが完治した場合または症状固定になると、「治療終了」となります。
※症状固定・・・これ以上治療しても症状が良くならない状態になること -
④後遺障害等級認定:ケガが完治せず、症状固定になった場合、後遺障害等級の認定申請を行うことができます。後遺障害等級が認定されるには、交通事故によって完治しなかった症状が発生したこと(怪我と事故の因果関係)を証明し、残った症状が自賠責保険によって定められた基準を満している必要があります。
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⑤示談交渉:通院が終了した時点または後遺障害等級の認定結果が出た時点で、相手方との示談交渉が始まります。
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⑥示談成立:当事者同士が示談内容に合意できたら、示談書に署名して示談成立となります。
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⑦示談不成立:示談内容に納得できなければ「示談不成立」となり、裁判などで争うことになります。
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⑧示談金(賠償金)の支払い:加害者から、確定した示談金(賠償金)が支払われます。
示談交渉の手順の注意点
① 事故後すぐに示談交渉を進めないこと
交通事故の示談交渉は、基本的にケガの治療を終えてから、または症状固定となってから行います。病院に行くことを怠ったり、事故後すぐに示談を進めるのは避けましょう。
② 治療費の支払を打ち切ると言われたとき
示談交渉が始まらなくとも、ケガの治療中に、加害者側の保険会社から「治療費の支払いを打ち切る」「症状固定にして」と連絡が入るケースがあります。
ケガの治療を続けなければいけない場合に、このような保険会社の打診に応じなければならない義務はありません。ケガの治療を続ける必要があるかを判断するのは治療を担当している主治医です。保険会社の打診に従うのではなく、治療については主治医とよく相談しましょう。
③ まずは専門家に相談を
ほとんどの方にとって交通事故による示談交渉は初めての場合が多いため、スムーズに話を進められることができず、示談交渉に慣れている加害者側保険会社と話を進めることを不安に感じると思います。まずは、交通事故に精通した弁護士の意見を聞くのが良いでしょう。
加害者側保険会社から示談案を提示されても、その場で返答してはいけません。法的知識がない場合、提示されている賠償内容が正当なものか判断するのは難しく、不利益な示談が成立してしまう恐れがあるからです。示談案を提示された場合でも、内容が適正なものか、まずは弁護士に相談したほうが良いでしょう。
加入している保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、無料で相談を受けることができることがあります。保険会社に確認してみましょう。
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当事務所でも、初回無料法律相談を実施しておりますので、ぜひ、ご予約下さい。
まずは、一度弁護士に相談することをお勧めします。ご自身が不利にならないよう、しっかりと準備を進めましょう。
交通事故の示談金の相場例
実際にお問合せも多い示談の事例をご紹介いたします。
それでは、交通事故でケガをしてしまった場合、ケガの程度によって具体的にいくらぐらいの損害賠償金を請求できるのか、架空事例を基に実際に計算してみます。
※なお、損害賠償額の算定にあたっては、様々な事情が考慮されますので、あくまでご参考程度に留めてください。
1 むち打ち症(自覚症状のみ)のケース
・事案
傷病名:むち打ち症(自覚症状のみ)
通院期間:3か月間
実際の通院日数:30日
休業日数:0日
・損害賠償額
慰謝料:530,000円(裁判基準)
治療費:500,000円
交通費:15,000円
損害賠償金合計:1,045,000円
慰謝料は、実際に通院した日数ではなく、通院した期間3か月で計算し、53万円となります。
治療費は、合計50万円でした。
病院への交通費は往復電車代500円でしたので、通院日数30日の交通費合計は1万5000円となります。
合計すると、裁判基準で124万5000円の損害賠償金を請求できることになります。示談の相場としては、事情にもよりますが、裁判基準の9割から8割程度が基準となります。
2 骨折で入院し後遺障害発生のケース
傷病名:骨折
裁判基準で1895万円の損害となります。仕事、収入、年齢などにより金額は異なる場合があります。また、被害者に過失がある場合は、その割合により調整されます。
過失割合により減額された賠償金の一部に相当する金額を人身傷害特約により取得できる場合があります。
交通事故の示談交渉を菅原・佐々木法律事務所の弁護士に任せるべき4つの理由
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