示談と裁判の違い
紛争解決の方法として「示談」と「裁判」という言葉が使われることがありますが、2つの言葉はそれぞれ意味が異なります。「示談」とは、裁判や調停などを経ずに、当事者同士の話し合いで解決することです。一方、「裁判」とは、当事者同士の話し合いで解決することができず、法廷で紛争を解決することです。
交通事故の場合、ほとんどのケースは示談で早期解決しますが、過失割合や慰謝料等の賠償額を巡り、裁判まで発展するケースも少なくありません。
交通事故の示談とは ?
交通事故の示談とは、過失割合や慰謝料等の賠償額について、裁判や調停などを経ずに当事者同士の話し合いで解決することであり、法律上は「和解契約」にあたります。
加害者は、被害者に対し、交通事故で被害者が被った損害を賠償しなければならず、慰謝料等の賠償額、支払い時期、過失割合などを巡り、双方の主張を基に話し合いによる解決を目指します。双方が合意した場合は、示談成立となりますが、後々のトラブルを防ぐために示談の内容を書面にした示談書を取り交わします。保険会社とやり取りしていた場合は、「損害賠償に関する承諾書」(免責証書) という書類になることもあります。
交通事故の裁判(訴訟)とは ?
交通事故の裁判は、「刑事裁判」と「民事裁判」の2種類があります。前者は、加害者の刑事責任を問うための裁判であるのに対し、後者は、加害者に対して損害賠償を請求するための裁判になります。「民事裁判」の場合、裁判を提起してから判決が出るまでに、およそ1年~1年半ほどかかります。ただし、判決前に和解が成立した場合には、6カ月~1年ほどで解決することも多いです。裁判を提起する際には、「裁判費用」(訴訟費用)のほかに、弁護士に依頼した場合には「弁護士費用」がかかります。
示談と裁判のメリットとデメリット
- メリット
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- 費用を抑えられる
- 早期解決が見込める
- デメリット
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- 裁判と比較して、賠償額が低くなりやすい
- 双方の合意がなければ解決しない
- 自分で示談交渉すると精神的負担になる
- メリット
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- 示談と比較して、賠償金が高額になりやすい
- 加害者に弁護士費用の一部や遅延損害金を請求できる
- 合意がなくても解決できる
- 強制執行力があるので、加害者に支払う意思がなくても取り立てることが可能(ただし、加害者に財産がある場合に限る)
- デメリット
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- 専門的知識を必要とするため、弁護士に依頼せずに行うのは難しい
- 訴訟費用や弁護士費用などがかかる
- 解決までに時間がかかる
交通事故の民事裁判について
民事裁判の手続は、弁護士に依頼せず行うことも可能ですが、専門的知識を必要とするため、弁護士に依頼しているケースがほとんどです。特に、最近では、自動車保険に弁護士費用特約が付帯されていることが多く、その場合には、保険会社が特約の範囲内で弁護士費用を負担してくれますので、弁護士費用の負担なく(少なく)、弁護士に依頼することも可能となります。
大まかな手続きは、次のとおりです。
民事裁判の手続き
- step1 裁判所に訴状を提出
- 裁判を起こすためには、まず裁判所に「訴状」と呼ばれる書面を提出する必要があります。請求額(訴額)によって、訴状を提出する裁判所は異なり、請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所になります。
- step2 口頭弁論
- 訴状を提出してから約1~2カ月後に、裁判所において、第1回口頭弁論が開かれます。訴えられた側(被告)には、裁判所から訴状が送られ、訴状を受け取った被告は、第1回口頭弁論までの間に、訴状に対する反論書面である「答弁書」を提出するのが一般的です。そして、裁判所は、原告被告双方の主張を整理し、争点を明らかにしていきます。こうした主張整理だけでも、複数回行われるのがほとんどです。 なお、答弁書を提出せず、第1回口頭弁論にも欠席した場合には、訴状に記載された内容を認めたと判断され、原告勝訴の判決が言い渡されることになります。
- step3 証拠集め・提出
- 双方の主張整理が行われた後、争点に関して自らの主張が正しいことを裏付けるための証拠を提出します(実際には、主張整理と並行して証拠の提出が行われるケースがほとんどです)。裁判所は、提出された証拠のほか、当事者や証人を尋問するなどして、どちらの主張が正しいのかを判断します。
- step4 和解協議
- 裁判は、最終的に判決が言い渡されて終了するといイメージをお持ちの方も多いかと思います。ですが、実際には、判決が言い渡される前に、裁判所から和解による解決を勧められたり、和解案を提示されたりすることがあります。原告被告双方が、和解案の内容で解決可能な場合には、裁判所内で和解が成立し、判決が言い渡されることなく裁判は終了します。
- step5 判決
- 和解による解決ができない場合には、それまでの双方の主張や証拠を踏まえて、裁判官が判決を言い渡します。判決の内容に不服がある場合は、上訴(控訴・上告)を行うことができます。判決書が送達されてから、14日以内に双方から上訴が行われなければ、言い渡された判決が確定します。
裁判にかかる費用 (訴訟費用/弁護士費用)
交通事故の裁判に必要な費用としては、主に「訴訟費用」と「弁護士費用」があります。
訴訟費用とは?
「訴訟費用」とは、訴状を提出する際に必要な 予納郵券や裁判所に収める手数料(印紙代)などです。こうした訴訟費用は、判決の内容に応じて、裁判所が原告と被告のいずれに負担させるかを定めますが、判決が確定するまでの間は、原告が立て替えて支払うことになります。
なお、 判決ではなく、和解により解決に至った場合には、訴訟費用は各々が負担するケースが多いです。
弁護士費用とは?
「弁護士費用」とは、紛争解決を弁護士に依頼した際に、弁護士に対して支払う着手金や報酬金のことです。 弁護士に委任した時点で支払う「着手金」と、委任事務処理が完了した時点で、結果に応じて支払う「報酬金」などがあります。
軽微な物損事故など、損害額が大きくない場合には、弁護士費用が大きな負担となってしまい、弁護士に依頼することを断念されるケースも散見されます。しかしながら、最近では、自動車保険に弁護士費用特約が付帯しているケースが増えています。その場合には、特約の範囲内で、弁護士費用の負担なく弁護士に依頼することができ、弁護士がより身近な存在になりつつあります。
交通事故の示談金の相場
示談金には、治療費・交通費・入通院慰謝料・休業損害・逸失利益・後遺障害慰謝料など、様々な費目が含まれます。一定の基準はあるものの、事故の状況や被害者のケガの程度などによっても様々ですし、保険会社によっても算定基準が異なります。そのため、提示された示談金が適切なのかどうか疑問に感じた場合には、弁護士に相談することをお勧めします。