こんにちは、弁護士の田中です。

ふと気が付くともう10月。時が経つのはあっという間ですね。

ブログの更新もずいぶん長い間、途絶えてしまい、楽しみにしてくださっている方(がいるのか分かりませんが)、申し訳ありません。

さて、今回は、親権についてご説明します。

親権とは、未成年の子の監護・教育・財産管理などを行う権利義務の総称です。

父母が婚姻中は、父母が共同で親権を行うことになりますが(民法818条3項本文)、父母が離婚する場合には、いずれかを未成年の子の親権者と定めなければならず、親権者が決まらないうちは、離婚自体することができません。

親権者を父母のいずれに定めるかについて、父母の間で合意することができるのであれば、離婚届に記載して役所に提出すれば足ります。ですが、父母のいずれも親権を譲りたくない場合には、そう簡単にはいきません。

では、親権について争いがある場合、どういった手続きが必要になるのでしょうか。

1 調停

父母の話し合いで解決しないようであれば、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます(離婚調停のおおまかな流れについては、ブログ「離婚について②」をご覧ください)。

調停の中では、2人の調停委員を交えて、父母のいずれを親権者とすべきかを話し合うことになります(あくまで話し合いの場ですので、意思に反して判断を強制されることはありません)。父母のいずれを親権者とするのかについて合意できれば、調停成立により終了となります(調停成立後にも若干手続きが必要になりますが、この点は別の機会にご説明します)。

調停委員を交えての話し合いでも合意が得られない場合、家庭裁判所の調査官による調査が行われるのが一般的です。調査官は、家事紛争に関して専門的な知識を有している方で、未成年の子の成長にとって、父母のいずれが親権者になる方がより好ましいかを調査します。具体的には、父母それぞれと面談をし、これまでの子の養育状況や子育てについての考え方を聞いたり、子と直接面談して子の意向を確認したりします。

調査官による調査結果は、報告書の形でまとめられ、父母も内容を確認することができます。調査官の報告書は、実務上、重要な役割を果たしており、後でご説明する離婚裁判においても、裁判所が親権者を決めるにあたって、非常に重要な資料になると言われています。それゆえ、調査官の報告書が決め手となり、父母の一方が親権について譲歩し、調停が成立することもあります。

調査官による調査を経てもなお、父母が互いに親権を譲らず、話し合いで親権者を決めることが難しいと判断されれば、調停手続は終了となります。

2 裁判

調停が終了すれば、あとは離婚の裁判を提起することになります(自動的に裁判に移行するわけではなく、家庭裁判所に訴状その他必要書類を提出する必要があります)。調停のような話し合いとは異なり、当事者双方が自らの主張を述べ、それに沿った証拠を提出することで、裁判所に判断を委ねます。テレビや映画でよく目にするような、尋問も行われます。調停とは異なり、専門的知識なくして十分な主張立証を行うことは困難です。

裁判=判決が言い渡される、と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、和解により終了することもあります。

3 終わりに

以上、親権について簡単な流れをご説明しました。親権についての争いは、互いに譲らず、話し合いによる解決が困難な場合が多いのも事実です。とはいえ、親権を争うということは、父母が子に対して愛情を持っていることの表われでしょうから、そういった意味では好ましいことかもしれません。また、考えようによっては、互いに、子に対する接し方や、子の将来について考える良い機会にもなるかもしれません。

父母の離婚によって、子が不利益を被ることはあってはならないことです。最終的には、子の福祉にとって何が重要なのか、感情的な対立を抜きにして、冷静になって話し合うことが必要なのだろうと思います(言うのは簡単ですが、実際には難しいですよね…)。